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<<   作成日時 : 2008/01/07 07:44   >>

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愛されていると
知ったとき
人を
愛する人に
変えられる


 私が勤めている特養老人ホームに入所しているAさんが、介護保険制度から「非該当」になって、施設を退所しなければならなくなった話を書いたが、その後日談である。
 大晦日の午後であった。Aさんが「年末の挨拶」に私を訪ねてきた。驚いたことに歩いてきたという。Aさんの新居から施設までは、私の足で30分はかかる距離である。彼の話によれば、歩いてくるために毎日少しずつ歩く練習をしたという。お世話になったお礼をしにきたというのである。彼の誠意がひしひしと伝わってきた。
 Aさんが非該当の認定になってから、私は「50人の入所者を愛することは、一人の入所所を愛することから始まる」と、Aさんが地域で自立できるように支援する方針を明らかにした。その方針に反発する人もいたが、多くの職員が賛同してくれた。Aさんの自立を支援する「無償の愛プロジェクト」が発足した。
 まず、一番の問題は、84歳の老人に住居を貸してもらうことであった。私は、施設と関係している不動産会社の社長を訪ねて、Aさんの住居について「私が身元保証人になるので紹介していただけないか」と依頼した。社長は話を聞いて「Aさんの身元保証人になるというのは、Aさんが死ぬまですよ」と念を押された。「そうなんだ、Aさんが死ぬまで私は生きていなければならない」ことだと、覚悟をした。
 Aさんの自立支援の機運も職員の中から出てきた。家財道具の購入費の募金活動も始まり、中古の冷蔵庫や布団の申し出もあり、ホームの理念「無臭の愛」が行動になっていった。
 12月12日、職員がお世話して新居に引越しができた。そして、その後Aさんの生活を支援するために、毎日朝、昼、夕方に職員の誰かが訪問して食事や生活の世話をしてきた。身寄りのない一人の老人のために、職員が真剣にお世話した。それは本来の仕事や役割の枠を超えていた。毎朝、自宅で彼の朝食を作って届ける職員もいる。感謝である。
そして、再度申請した介護認定も「要支援1」の認定がされた。デイサービスや訪問介護が受けられることになった。
 もし、彼が非該当になった後、施設が支援しなかったら、彼はホームレスになっていただろう。そして、自分の人生をのろったであろう。施設に対しても、国に対しても恨みを持ったであろう。しかし、彼は彼を支える人々の無償の愛によって、愛されていることを知ったのである。そして人に感謝し、人を愛する人に変えられたのである。
 元旦の日、お昼の配食弁当をもって彼の新居を訪れた。彼は涙ながらに「お世話になった、この恩は忘れません」と語ってくれた。私の胸も熱くなった。彼の自立支援の活動を通して、実は感動を与えられ、「生きるとは何か」「愛とは何か」を教えられたのは、私であり、彼の自立支援の活動に係わった人々であった。
 Aさんの自立支援のための活動は、法律とか制度とか、しきたりとかを超えて働いた「無償の愛」から生まれたものであった。その活動を通して、私は「真実の愛」とは何かを教えられた。彼は、自分が人々から愛されている存在と知ったとき、人に感謝し人を愛する人に変えられたのである。

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